怪物図録・藤右衛門火事

愛知県の津具村で上のほうの上町に、藤右衛門という農夫がいた。明治初年、浪人上がりの流浪の老人が入り込んできた。いわゆるユスリタカリのたぐいで村人に蛇蝎のように嫌われ、火の玉小僧という隠語で呼ばれた。誰も抵抗しないものだからどんどん付け上がる。

それで殺そうということになり、村民で竹やりやこん棒を使い追い込んでいった。たまたま出くわした藤右衛門が打ち殺し、一件落着となった。七月の昼だった。

まもなく藤右衛門の家が謎の炎上、類焼にいたるほどひどいものとなる。

以来上津具で起こる火事は全て藤右衛門の家が中心になった。落雷火事、ガソリン火事、いずれも七月の昼前後と決まったようになってしまった。

この火事を村では藤右衛門火事と呼ぶようになった。

(田中貢太郎「日本怪談実話」桃源社)

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怪物図録(本編)
by r_o_k | 2008-11-28 03:52 | 怪物図録 | Comments(0)