怪物図録・厠の報いを受けた男

和州高市郡鳥や村という所の話。農民の甚七は常から親不孝であったが、あるとき耕作から帰ったところ、母は茶を煎じて飲んでいた。飯の仕度もせず何をするかと大いに怒り、釜の中の茶袋を引き出し傍らの茶葉とともに紙袋に詰めて厠に投げ捨ててしまった。日々そういったことを続けているうち熱病を患い、ついに死んでしまった。

死骸を整えて置いたところ、不意に起き上がり厠の方へ走り出た。追いかけると、厠の隅にうずくまっていた。

引きずり出して葬式をあげていて、しばらくは晴天で風もなく、このような悪人のときには珍しいことだと言ったはなから一天俄かに掻き曇り雷が天地を轟かせ土砂降りとなった。仕方なく止むのを待っていると、戌の時ごろに晴れたため運び出そうとしたところまたもやバケツを引っくり返したような雨になり、前にも増して雷鳴激しかったが、もう待てないとそのまま野辺送りをし、穴の中で火にかけた。

翌日、灰を寄せようと見に行ったところ、男が炭になったそのまま、穴の中に起きあがっていた。

見た者身の毛がよだち、薪を山ほど積んで、二日もかけてようやく灰にすることができたという。

(新著聞集)

これは中国のキョウシ(キョンシー)の話によく似ている。走屍ともいい日本でもしばしば報告された話で、「中身」が無いため取り捕まえて無理やり棺おけにおさめたりした。猫に魅入られると動き出す、という俗説も多く囁かれた。猫や鼠はこの世とあの世を行き来する霊獣として東西アジアに広く知れ渡っている。

怪物図録(本編)

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Commented by kenz_freetibet at 2008-11-25 23:55
走屍で検索したら
ttp://ameblo.jp/holgerczukay/entry-10038622807.html
がヒットした。
あるんだねぇ、こう言う事が・・・
Commented by r_o_k at 2008-11-26 00:04
杉浦先生だと百日紅ではなく百物語収録の話のほうが厚みも凄みもあります。ちょっと都市伝説風の書き口ですけど、海外でも稀に出る話です。かなり詳しい観察や分類のたぐいは中国でなされていて、日本にはその影響が強いです。学生の頃中国の文献で読んだおぼえがあり、確か今は文庫化もされていたかと思いますが、どこかへいってしまった・・・水木しげる先生が20年近く前に台湾でキョンシーの取材をした番組があって、確かどこかにとってありますが、土葬の国ではかなり「メジャー」な話だそうで・・・ゾッ
by r_o_k | 2008-11-25 23:28 | 怪物図録 | Comments(2)