七人の男がそれらの水浴する場に出くわした。
彼女らは蟹の殻を脱ぎ、人の形をしていた。男らは殻を持ち去ってしまった。しかし彼女らを人間の美女と勘違いし結婚したので、まるくおさまった。
中央セレベスのトラジャの伝説。「台湾生蕃伝説」;藤澤衛彦「変態交婚史」文芸資料研究会S2(発禁、紀田順一郎監修「精選社会風俗資料集第2巻変態十二支(2)」クレス出版H18収録))によれば蟹から人への変態する話自体が少ないように読めるが、言葉遊びに近いとはいえ江戸随筆に蟹に羽が生えて飛び去る話などがあり、竜への変態についても確かあったと思う。中国の古籍、いわゆる志異書の怪異に蟹がネズミになる話があるがそれに似ている(氏は誤認説として紹介している)。
藤澤氏は異種婚姻についてこのような山気の高い一般書と別にきちんと研究書をまとめているが未見。戦後「妖婚譚(変態交婚の話)」国民教育社S25に平易な小説体で書きなおしている中にこの話も収録されより詳しく分析されている。

怪物図録(本編)