ある晩、女は海を泳いできたというびしょぬれの男から呼び出される。二人は人知れず逢瀬を重ね、気分もたかまりついに淡路島へ駈け落ち渡ろうと漕ぎだしたところ、沖の荒海で振り向いた男の顔は恐ろしい海神であった。水ぞこに妻として永遠に引きずり込まれそうになるものの、なんとか逃げ出し気を失ったまま漂着。
海神が取り返しに来るのを畏れ、欺くべくわざと醜女に描きかえた似顔絵を海に依代として投げ込むと、げんめつしたのか海はしずまり、以後この絵そっくりの醜いオコゼが繁殖したものだから、それを沼島女郎と呼んだ。「海の伝説と情話」T2大阪朝日新聞・盛文館より。

怪物図録(本編)