【デマ予言】ウマがしゃべると落語家が死ぬ【江戸迷信】

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アマビエはじめ予言獣は妖怪の形をとるが、古来予言する者は神か獣。神は直接語らぬもので、おおかた身近な家畜や、稀な野生動物だった。デマ予言として落語起源譚に連ねられる話を宮武外骨がまとめたものは、最近ネットでも広く知られるようになっている。

元禄6年4月下旬ある所の馬が物を言う。

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本年ソロリコロリという悪疫流行す。南天の実と梅干しを煎じて飲めばよし。

これを「病除の方書」という小冊子にして発行した者がいて、物好きが目をつけ、噂となって大きく広がり、南天の実と梅干しを求める者多く20倍に高騰した。

悪疫のことで皆頭が一杯で仕事も手につかない様子に6月18日月番の町奉行からおふれが出る。馬が喋ったという不届きな噂をたてたのは誰か、順々に遡り話し書き上げよ云々極めて厳重に言い渡した。

すると「堺町馬の顔見せ」なる、役者見習いの齋藤甚吾兵衛が堺町市村座で市川團十郎の乗る馬になったが、贔屓の者が見に来たので馬のまま応答したという落語を、当時の落語家鹿野武左衛門がしたため鹿の巻筆と名付けた本に載せたのを見て、神田須田町八百屋総右衛門と浪人筑紫園右衛門が申し合わせ前のような話を作り、梅干呪法の書物等をもって大金を巻き上げたと発覚した。

関係の数人が牢に繋がれ、翌年三月首謀者の浪人は市中引き回しの上斬罪、八百屋は流罪中牢死、何も関係ないのに落語家もデマの元になる根も葉もない話を出版し人心を狂わせたとがで三月二十六日伊豆大島へ遠島となった。版木元弥吉という者も追放、版木は焼却された。武左衛門は5年を大島で過ごし江戸に戻るも憔悴して8月に没した。

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ソロリは曽呂利にかけているのか、単なるとばっちりにしても悪質だ。こういう「出現した者が悪いことを予言して逃れる方法を教える」パターンは洋の東西を問わない民話だろう。「これさえすれば免れる」系は念仏宗の考え方の換骨奪胎であり、人々に馴染み易かった。ただいささか数が多く、識字率の問題もあるだろう、妖怪の絵を写すだけになってしまった。決して江戸だけの話ではないが、江戸以外で起きたことを、不可思議めかして江戸の人に伝える形が完成した。そういうものは江戸時代と言えど見識のある者は相手にしなかった。縁起を担ぐ庶民に受け容れられても流行神としては弱い。結局ただ訪問してきた拝屋の売り物であったり薬屋のおみやげ品のような扱いをされたのだろう。

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京都三条大橋の旅館に坊主が二人立ち寄った。米2斗を飯にしてくれといってそれを平らげ一両も置いていった。亭主はあまりに不思議に思い後をつけさせると、大津の茶屋まで来て何故ついてくると言われ、あまりに不思議なので亭主の命でお見送りさせていただいておりましたと答えると、我々は瀬田大橋の下に住む蛇です、見送りいただいた礼に一つお聞かせいたしましょう、一両年は諸国豊作でしょう、しかれども人は6割死にます、この一言を聞いた者は助かるでしょう。人々に広めなさいと言って消えた。「水海神」という文字を見たり三べん唱えても6割の死は免れます。

【原注】この話はデマである。いつのことか月日もわからない。江戸では他の土地のことはそれぞれの役目が様々にタイムラグあって伝えてくるものだ。先に8月頃千葉沖で地引網に3つ頭のイヌの形のものが引き上げられたという絵を誰彼ともなく見せられたが、ウソだから書物には収録されないだろう、この一件も上方のことゆえ私も故郷へ帰ったときに友人に聞けば虚実は明らかになるだろう(吾妻みやげ)

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ソロリコロリ、って、落語家殺し、って疫病なんだろうなきっと。コロリはコレラと語感が似てるだけで突然死を含む症状をいうのだろう。元禄十二年に古呂利の流行りあり、意味は古来卒倒、とWikipediaもとい浅田宗伯「古呂利考」にあるそうな。とにかく宮武外骨だけを典拠にするのはちょっとねーだけれども。



by r_o_k | 2021-02-17 14:11 | 不思議 | Comments(0)

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