【軍事怪談】死んでも離さない

死せる勇士の戰車操縱

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昭和十ニ年九月、楊行鎭攻略後、呉家宅附近の戦闘で、 敵陣間近に進撃した岡林准尉の指揮する戦車隊は、阿修羅の如く荒れまはつて、敵の野砲陣地を打つ潰して、三百五十メートル手前の味方の陣地ヘ悠々と引きあげて來た。

其の岡林准尉の乗っていた戦車は、藤野清人上等兵が操縦して、甲斐大作一等兵が砲撃してゐたが、甲斐一等兵が重傷を負ったので、其の後は岡林准尉と岡村一等兵が代って砲撃してゐた。そして、味方陣地ヘ帰りついてみると、藤野上等兵もとうに戦死して、戰車のハンドルを握ったま操縦席を離れずに冷たくなっていた。其のエンヂンを見ると、エンヂンも止まっていて、かけてもかけてもかからなかった。エンヂンが止ってゐる上に、操縱者が戦死してゐて、どうして戦車が其處まで動いて來たのか、藤田部隊長以下一同は、

「これは死んだ藤野の霊が操縱して來たのだ」

と云って、何人もそれを疑ふ者がなかった。(田中貢太郎「天狗の面」)

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〜日本怪談実話(現行版)はかなり載せているようなのでこれも(キナ臭いとはいえ話としては相対的に軍国主義的ではないから)収録されたのではないか。旧版持ってるのに覚えてなかったので載せときます。田中貢太郎が何か権力に左右されて軍国物を書き、厭になって郷里に引き揚げた可能性にも思い馳せる。戦後似たような話が採録され創作物に採り入れられたが、源流にこの人がいたことを覚えておいてもらえるとファンとして嬉しい。それにしても田中貢太郎実録はかなりの割合が高知の人間の話で占められてるよな。苗字を見て苦笑。

写真:
読売新聞社「大東亜戦史前編 支那事変実記 第2輯」s17
遊就館展示

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by r_o_k | 2018-07-24 12:38 | 不思議 | Comments(0)

揺りかごから酒場まで☆少額微動隊

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。

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