近代怪談 博士の怪談 〜蜘蛛、死神

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これは幻覚と結論を置いたうえで井上円了博士が報告した怪物である。 

越前勝山で食あたりにあい四、五日臥せってから夜行列車で帰郷したあとのこと。家につくとまだ午前中だったがそのまま座敷に横になった。 

蠅除けの蚊帳を吊っていたが、天井を見ていると、急に蚊帳が動く。 

次第次第に縮まってくる。 

手で握られるくらいまでになり、顔に触れるものだから止めようとすると手が動かない。身体が動かず人を呼ぼうにも咽喉を押さえられているようで声が出ない。呼吸が止まりひどく苦しんだ。懸命に動いて、何とか立つと、後ろから頭を押さえてくる。わきの下から大きな毛むくじゃらの足が二本見えた。 

オノレ怪物! 

と組み付いてねじ倒して見ると首から下は一面毛の生えた蜘蛛であった。 

見回すと枕頭に扇があったので要で蜘蛛の咽喉を突き刺した。 

ふと安心したところでこれが夢であることに気がついた。 

しかし眠って見る夢ではなく目がさめていて見た夢であった。 

精神身体に異常のあるときは「眠らず見る夢」があるものである、思えば蜘蛛の怪物を見たのは天井に蜘蛛の巣があったのを見ていたからなのだ、としている。 

(佐世保軍港新聞) 

死神につかれ何度も自殺仕掛かった婦人の話。 

あるとき不意にこの世の中が詰まらない様な気がしてたまらない。傍らの研ぎ澄ました鋏で喉を突こうとし、寸で主人が鋏をもぎ取ったが、後日もわけもなく自殺を思い立つようす、催眠術などでいっときはおさまった。 

しかしある晩二階で似ていると、誰だか知れない女が枕元で呼ぶ。目をあけても知らぬ女だったが「こんな詰まらないところから出ていっしょにいいとこへ行こうよ」と強く責めるように奨める。困っていると少しずつ移動して、階段の上まで引き立てられていた。 

たまらず助けを呼ぶ。皆死神の痕跡を探すがまったく無い。 

三度目風呂の帰り、とある街にさしかかるとあの夢の女がいる。ふらり、と寄って 

例のように 

死ね 

死ね 

とささやく。 

別にその必要も感じなかったのだけれど、ふらふらとついていった。 

そこは緑深い谷で百花繚乱の中、美しい婦人が何人も何人も楽しそうにあそんでいる。 

、、、急いで行かなきゃ。 

気付いたら三宝木津川波止場で、大川にひとり身を投げようとしていた。 

(福来友吉「不可思議」より「死神の附いた婦人」、「ムラサキ」掲載、「不思議の研究」博士書院M42収録)
2012年07月18日 mixiサルベージ
(「怪物図録」参照)

by r_o_k | 2017-07-21 19:47 | 不思議 | Comments(0)

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