(暫定版)江戸怪談 ゆうれいを煮て食いし話

2012年12月07日
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もうもうと煙立つ鍋。
戸も開け放したまま何物か一心に食らう男たちがいた。道行く者もいない真夜中のことである。

ふと僧侶が顔を出す。
「随分と”ごうせい”ですな? 」

「へえ、実は・・・」
皆で夜道を帰る途中、前にぼうっと光るものが見えた。
おかしく思って、恐ろしくも思って、よーく見ますと、

宅の前に父が立ってました。

「こんなところにいるわけがない。 」

胸の病でお医者にかかって、今は遠くにいるはずなんです。

「おっ父・・・なんで」

すると、

「けえっ!! 」

と声をあげたんです。
びっくりして

・・・駆け寄ってみると大きな五位鷺。

とっつかまえました。こいつお父に化けてやがった。
ばたばたと物凄い力で、みんなで押さえつけてやっとのことで絞めてやった。
往生しましたよ。

「そういうわけで、こうして鍋にして食ってるわけなんです。お坊さんも どうです?生臭ものはダメですかね? 」

僧侶、皆の後ろで湯気をたてる鍋をじっと見つめる。

「・・・こんな話がある。 」

あるお殿様が鷹狩りをしていた折、ある貧乏な家に雉が舞い込んできた。
雉は驚く夫婦のまわりをぐるぐる回ると、夫の懐に飛び込んだ。

ふびんに思った夫婦は、
「このへんに雉が来なかったか」
「いいえ」
と言って匿った。

雉を懐から出してやると、慣れた様子で家の中を歩き回った。
その姿を見て夫は叫んだ。
「親父だ!」
雉の頭には奇妙な形の禿げがあった。まさしく死んだ親父様と同じものだ。
妻は奇遇に涙を流した。

・・・だがその晩、畑仕事から戻った妻が見たのは、ぐつぐつ煮える鍋を前にした夫の姿だった。
土間には禿げのある雉の首が転がっていた。

「こうして食われるために戻ってきてくれたんじゃあないか。久しぶりの肉だ、お前も食え」

にやりと笑った。
妻は恐れお上に届け出た。

「転生の父を食うとは何事か 」

とお咎めがあり、夫は所払いとなった。家は妻のほうが継ぐことになった。

「・・・さて、その鍋の中、本当にただの鷺ですかな?」

そう言い残し、すっと後ろを向くと、家を出る。

振り向きざま鍋の煙が晴れる、

そこには

縁から人の足が・・・

<根岸鎮衛「耳袋」宮負定雄「奇談雑史」より編>
(mixiサルベージ)

by r_o_k | 2017-07-18 20:05 | 不思議 | Comments(0)

岡林リョウの日記☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi