揺りかごから酒場まで☆少額微動隊

岡林リョウの日記☆Twitterまとめ日記。過去旅行の整理、歴史・絵画など。

さんじゅわん様で検索して

2010/5/20
さんじゅわん様で検索して_b0116271_23095480.jpg

私のネット上の記述は一部を除きまったく記憶にのみ依っているため正確さや適切さを欠く場合があります、としておいて。

「さんじゅわん様」でぐぐる。

結果をみてみよう。

一様に、漫画とその映画化にかんする、更に漫画の設定をヒョウセツした事実上の二次創作。

「サンジュワン様」でぐぐる。

結果をみてみよう。

カクレキリシタンのオラシオの名称ないし信仰の対象。

Google日本語版頑張ってね。


諸星大二郎先生が生命の樹で描いたのは断片的知識を材とした完全なる創作であり、ボルヘスの描く知識とないまぜの幻想のようなものだ。

カクレキリシタンをいかがわしげなオカルトとみなす以前に、まず後者のような知識を身につけなせえ。偏見や差別は素朴より育つ。現代の素朴は辺鄙な田舎ではなく町に無数に存在する密室に生まれる。


参考の無断リンク
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Knight/7829/texts/yougo.html


サン・ジュワンは聖ヨハネ、とくに洗礼者ヨハネのことをさす。

迫害され潜伏した長崎のキリシタンにとって、ひそかに宣教師が来訪し人々に洗礼を授け、「海の上を去っていった」「殉教した」という伝説はそのまま洗礼者ヨハネからキリストそのものと重なるものだったようだ。従って「生命の樹」のアンチカクレの神父の「サンジュワンは聖ヨハネのことで3人という意味ではない」という指摘は妥当性があるように思われる。

しかしおおかたのカクレキリシタンにとって、それが洗礼者ヨハネだという意識はなかった。三人の聖ヨハネという意味ですらない。実のところそれはもっと身近な、日本人、ヨハネ(ジュワン)という洗礼名を授けられた殉教者のことだった。サンジュワン様はいわば抽象化された先祖(三人・・・三位一体説が関係しているのか仏教式の混合なのかわからないが)の通り名として各地に残った。

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〜「3」の象徴するもの(生月島、三体像は撮影不可)

はっきり伝承が残っている生月平戸近辺では、「さんじゅわん様」がはっきり一名の殉教者として伝わっている。平戸で壮絶な死を遂げた宣教師カミロ神父の家主だった、ジュワン坂本左衛門がそれである。転びを拒否したりカミロに関わったため、当時刑場として血に塗れた「天国に一番近い」中江ノ島での殉教者の中にはジュワン次郎右衛門やジュワン雪ノ浦次郎左衛門とヨハネ名の者が相次ぎ、結果、御三体サンジュワン様という裸体の三体像が中江ノ島の聖なる崖地に奉られ、そこに湧く聖水は現在に至るまでカクレキリシタンにとって「奇跡の水」とされている。同体の三体像は代々生月の民家でも奉られてきたが博物館で見ることができる。洗礼名が限られていたことからジュワンの名は広く使われた。中江ノ島でも三人には留まらない数のジュワン様が首を落とされたに違いない。象徴として初期の三名が奉られ、象徴として複数形によるジュワン様の名が使われていったのだ。

「サンジュワンは聖ヨハネのことで3人という意味ではない」というのは、仮にもカトリックの神父として(舞台は青森とはいえ)現実にはありえない見識の狭さである。エンターテイメントとして楽しむ一方、ここに引っ掛からずに二次創作までやらかし、Google検索結果を占有するとはいかがなものかな。

東方の三博士との混同のような表現もあるがこれは漫画の空想でしかありえない突飛さなので寧ろ看過できる。旧約と新約が無造作に混ざること自体キリスト教としての布教の実際においてありえないわけで、また、長崎のカクレキリシタンと南部のキリシタン(ハリストス派の宣教師が八戸より五戸へ流れ土着した可能性がある)が布教時期も宗派も違う可能性が高いことも考えると、ま、架空なのである。

近年、呪術的因習を抱き秘密に隠されたカクレキリシタン村の都市伝説がよく聞かれるようになった。密室や狭い見識の中でいかがわしげに感じたものにレッテル貼付けて喜ぶ連中が目立つ。子供ならいざ知らず。キリスト教が現在どういう組織でどのような基本教義を持っていて、いまはどういう位置付けで何をやっているのか、どのくらい貧乏か、どのへんが新興宗派で儲かっているのか、地域とどう関わり最近何が問題とされているのか?

基本スペックを知らず見た目と噂と短絡的調査だけでとっぴな結論。それは諸星大二郎クラスの幻想作家にのみ許されるクリエイティブである。本気なら、遠藤周作になれ。

甑島調査する奴いないかの。離島の風の強い土地の家(カクレは荒れ地に敢えて根をおろした)は異様に塀を高く作るものだ。人がなくなったら船で運ぶゆえ時間もかかるから、白い布でぐるぐる巻きにしているのを見かける。そういうのは私なんて少ない経験から言ってるだけだが、実際秘境でもなし公式に取材することが難しいわけないはずだけどねー。さすがに差別的呼称を固有名詞として伝える声は聞かれなくなったが、いずれそれは夢とは言わない。

by r_o_k | 2021-02-01 23:05 | 不思議 | Comments(0)
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