隠身術(隠蓑)

隠身術(隠蓑)_b0116271_23171394.jpg

隠蓑というのは中国の「隠レ身ノ」術を日本語に移し変えるさい似た響きをあてたものである。華厳経には「安巻那」という薬が出てくる。目に塗ると他人から見ることができなくなる。抱朴子には、1000年を経る柏の木の根方に七寸ほどの人が座るような形をしたものがあり、刻むと血が出てくる。これを身に塗ることで姿を隠すことができる。再び見えるようにするには拭けばよい。(立路随筆)

昔は隠身術もしくは隠形術という超能力的な方法の存在がまことしやかに語られていた。恐らくここで(てきとうに)指摘されているように中国からの輸入概念で、昔話として加工され面白おかしく伝えられたものだろう。怪しげな山伏天狗や陰陽仙人の奇術として考えられ、しばしばその持ち物が能力を与えるともされたから、隠れ蓑などという発想も生まれた(音読みからの発想、という可能性も十分ありうる)。「自分の目に」塗ると「他人の目に」映らない、というのは「視覚」に対する認識のあいまいな古いとらえ方だなあと。狼の睫をもらって目にかざすと人間の「真の姿」が見えた、という江戸話もあるが(輸入っぽい・・・江戸も後期にはヨーロッパの民話までもが知られるようになっていた)寓話に近いものでだいぶん形を変えたオチ話である。いずれ身を隠したいという欲求は世界中の人間が古来抱いてきたもの、昔サイトのほうで紹介した明治時代の少年が隠身術を身に着け新聞に載った、という田中貢太郎の記録も、当時の(今で言う)三面記事の温度を考えると、埃をかぶった昔話の焼き直しの捏造、というのが妥当な線かもしれない。開化は今考えるほどぱっと起こったわけではなく、相変わらず心中江戸人が跋扈していたのが近代日本である。

しっぱいしたけどいいや。
by r_o_k | 2009-11-25 23:41 | 怪物図録 | Comments(0)