身替わり天狗


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正徳の頃、江戸神田鍋町小間物商の14、5歳の調市、正月15日の暮れ方に銭湯に行くと言って手ぬぐいなど携えぶらり出て行った。少しして裏口に佇む人がいた。誰だろうと咎めると、先ほどの調布であった。股引草履の旅姿で、藁包みを杖にかけて中に入ってくる。主人は聡い男、慌てることなくまずわらじを解き足をすすぐがいいと桶を出した。恐縮して足を洗い、台所の棚より盆を出して、包みを開けば野老だった。積んで土産ですと差し出した。そうして、今朝はどこから来たと尋ねる。秩父の山中を今朝出た、長々と留守にしてご迷惑をおかけしましたと言う。いつ家を出たと問えば、昨年13日煤払いの夜、かの山へ行き昨日までそこにいました。毎日お客が来て給仕をしておりました。様々の珍しい物をいただきました、お客様はみなご出家の僧侶でありましたとのこと。昨日おっしゃるところ、明日は江戸へ返そう、土産に野老を掘りなさいと達しがあったことによって掘って参りましたなどと語った。師走にこの者が出たことなど、家に気付いた者は誰ひとりいない。身替わ
りに何者かが化けていたのだと、後になって知ったのである。そのあとはとくに不思議もなく、それきり。(諸国里人談)

盗まれた町、ですね。SFボディスナッチャー!表題が天狗を雇う、となっていたので天狗とした。
by r_o_k | 2009-11-19 02:05 | 怪物図録 | Comments(0)