坂本龍馬は幽霊になったのか

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阿部主計氏「妖怪学入門」はハードカバーではあるがごく平易な一般書である。氏自身あとがきに書いているとおり先達の多い「幽霊妖怪史」本で目新しさはないが、懐疑的なスタンスを保ちつつかかれる挿話にはふるい時代の人にしか書けないような生々しく懐かしいものもある。

田中河内介の呪いとともに皇室や日露戦争にまつわる話がかかれている。この人は皇室にかんしかかる実名を隠したり明記を避けるなど配慮し過ぎるため、天皇の母になることを阻まれ以後男子に恵まれぬよう呪い死にした一人の女性・・・今も続く・・・が誰だったのかわからない、等踏み込みの甘さがある。しかし薩摩に起こる凶事がことごとく田中河内介の呪いのせいにされていたことなど、よその地域では余り知られていないようなことがかいてあるのは面白い。

坂本龍馬が日本海海戦前夜に皇后の枕元に平伏しあらわれ、加護を申し出た話がある。皇后はリョウマの名を知らず、翌朝側近に何者かたずねた。海戦は大勝利におわる。

氏は完全に疑いをもっている。おかしな時代の空気が怪談にもいさましげな風を吹き付けていた。だから明治からの怪談とて江戸の与太話とたいして変わらぬ精度をもったもの、ただ、ふと龍馬ときいて思い出したのが、司馬遼太郎記念館の天井にあらわれた「シミ」の話だ。何故坂本龍馬記念館に顕れないのかわからぬがその「横顔」を見に行った人も多かったときく。龍馬の横顔なんて表に出ている中には残っていないから誰も知らないはずなのだが。それを龍馬と皆が認識したことのほうが不思議である。

龍馬の異様な人気は何人かの劇作家・文筆家により漸次もり立てられたものだ。明治も落ち着いた頃からであり、しかも余り考証的なものはなく、お龍さんが直接インタビューされたのは晩年である。ほかは殆どそれらの焼き直しか創作にすぎない。日露戦争のさい皇后は龍馬を知っていたか・・・私は知らなかったのではないかと思う。時期的に龍馬人気が高かったのは確かだが、今の皇室とは違う。巷説を知る機会は無かったろう。実際龍馬のやったことは歴史の正面に掲げられることではなく、裏方である。むしろ人格性格に魅力が見出だされているのは奇異にもおもえる。司馬遼太郎の産物だろう。

うちは龍馬と無関係でもないらしいのだが、私は余り興味がない。でもこんな本に、「妖怪」としてとりあげられているとがぜん、親しみがわくのである。
by r_o_k | 2009-11-01 21:47 | 不思議 | Comments(0)

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