![]() 江戸八町堀二丁目のねぢがねや甚兵衛という者、あるとき客と話し込んでいると、六十ばかりの老婆が頭に手ぬぐいを置いた格好で中戸の口にたたずみ、 「いかに甚兵衛、迎えに来たぞ」 ここへ来いと手招きする様子を小間使いたち、顔を見合わせ、 これは何者だ、狂人だろう と引っ張り追い払おうとしたところ、甚兵衛、急に苦しみだし、 気絶した。 薬や針などしても蘇生かなわず、 夜には死んだ。 あの姥は何者だったのか、後で調べても誰も知らなかったという。延宝五年のこと(新著聞集) 場所と名前と時間が明記されるのが江戸期に確立した「実話怪談」のセオリー。ほんとかどうかはわからない。 ![]() 折檻のすえ井戸に投げ込まれたという皿屋敷で有名なお菊の話。ほんらい江戸番町だったらしいが播州と読み替え、姫路城の大井戸をはじめ各地でまことしやかな伝承が語られた。流言蜚語が流行りがちな風情、お菊が縛られ折檻された姿に似た虫が大発生した、怨念だという話が江戸市中語られたが、ジャコウアゲハという長崎以西に特有の南方性の蝶の蛹であり、それら西方の大名屋敷の植木から江戸に広がったと推定されている。しかし実際の棲息域でも話が拡がると、なにやらこの話で一儲けしよう、蛹を売って、これにて功徳を積もうと呼びかけんとした商売人の姿も見え隠れするのである。 ![]() これは我が父だったものです。 若い頃鳥を刺し網を張りあらゆる殺生をした報いでしょう。俄かに煩いこうなってしまいました。物を食わせてみせましょう。 粥を頭に注ぐと、鳥のくちばしが無数に出て、 「けーっ」 少し鳴き声して、喰った。 病気や職業の差別があった時代のうわさ話とはいえ不気味である。 殺生ものでは、不浄のことをなしたものの子が不自由な身だったが、ふと鳥を描き始めた。まるで生きているようだと評判になるが俄かに煩いつくと、 これはどこそこで撃った鳥 これはあれそれで危めた鳥 ひとつひとつ説明しはじめ、父親いちいち思い当たるに、事切れるまで描き説明し続けた。その画帖がこれだ、と見せられた、という話も印象的だった。 ![]() 下記参照しました。カラコロと引きずるような音につきまとわれる。すると怪我など不幸にあう。いったん憑かれると時々音と共に不幸が訪れるようになる。通り悪魔のたぐいだろうか? http://occult2ch.blog.shinobi.jp/Entry/1051/ ![]() 元和六年伽藍が再建されるという計画から仮堂で営むようになったときのことである。慶安二年、再建の資金などめどがつき、奉行をはじめそれぞれ管轄にお越しいただいたとき、伽藍の地形を調べていて、怪しげな石の箱を掘り出した。蓋をあけて見ると、差し渡し一尺ばかりの巨大髑髏が出てきた。みな驚き訝んだが、開山仙人の話が語られるにいたり、元通り埋め戻された。(新箸聞集) 陰明とは違う使役神のありさまのようだ。 下総に現存する弘法寺は学坊で知られた古刹である。国府台の古戦場が近く里見氏の悲哀にまつわる怪しい伝説、更に弘法寺にも涙石という怪異が語り伝えられ、現在も見ることが出来る。
江戸時代さかえた寺でもあり、その恐らく末期のこと。天候不順と飢饉、海外からの圧力がもたらした人心不安が民間信仰上特異な流行神という「俄か神様」の無数に生んだ。 弘法寺に日蓮像があった。木像であったという。 それが夜な夜な、読経するというのだ。 ネガティブにとるものはなく、ありがたや、近在の男女が昼も夜もこぞって詣でて大騒ぎ。当時の住職日堪上人、不審に思い夜、参詣を禁じ、木像に向かって問答を仕掛けた。像は黙り込んだ。法問の奥義答えなくば打ち砕くと責めるが黙りこくったままである。上人、立ち上がり斧を片手に木像を引きおろすと、後ろから古狸が慌てて逃げ出した。 追い詰めて打ち殺した。 (新著聞集) ![]() ![]() 能勢日向守が京都へ向かう途中松平越前守の屋敷へ迎えられ、饗応を受けたその夜のこと。燭台を手に便所に行き帰るとき、ふと右を見ると、茶屋があり、中で火が燃えている。間もなく四枚障子が開いたり閉じたりし始め、見るうちに子供の首と、坊主の首が出入りする。不審に思い息子を呼び、あれを見てみろ、と。 息子、誠に異様なものではないですか、とこたえる。 即座に二人で茶屋へ赴き障子の前近くに寄るとはたと、中に見えていた火は消え、あの首も見当たらない。茶屋に入り隅々まで探るが不審なものは見当たらない。引きかえし、縁の近くに来て振り返って見ると、また前のとおりだった。狐狸のわざなら探した時物音くらいはするものだが、無音だった。あれは何だったのだろうと語ったという(新著聞集) ![]() 怪奇文筆家山口敏太郎氏の事務所に所蔵されている、江戸時代の面と思われるもの。何か人間のようなものがついているといわれ、人目につく場に持ち出されると、近寄ったり運搬に携わった者の主として近親者に不幸が訪れる。特に酷い呪いというものではないが、面とともに見知らぬ大男が目撃されたこともあるようだ。 テレビ番組に露出するもよう。 http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/e/e15270588db640e2e80028fe014448fc こういうものには近寄らないが吉。だが気に入られることもある。チャレンジャーはどうぞ何かのイベントでどうぞ。ノーサンキューだ。ちなみに、あえてリアルな形を写すのを避けたが、凄い難しかった。なにせ、ほとんどデスマスクじゃんか。 ![]() ![]() 鹿島村しんかはきの明神前渡し船に、賀茂村の平野六太夫という者が乗ったが、川の真ん中で、船がわけもなく動かなくなり、同乗者みんな顔面蒼白になった。六太夫、不意に船から飛び込み水底に沈んだ。すると船は簡単に動き出し向こう岸についた。彼の家にこのことを伝えると、とても悲しんだが、どうすることもできず、月日だけが過ぎ去る。三回忌になって、法要をしていたところ、ふらっと六太夫が帰ってきて、これは何事かとみな驚き、もしや狐狸の妖怪かとためらっていたが、何の不審なこともなかったため、一同安心した。 理由を問うと、六太夫は、私は別に何を思うでもなく船から落ちた。すると竜宮界に入り、竜神からしきりにわが力を借りたいと言われる。とにかく川を渡せと様々に論じあった揚句、二日くらいでやっと話がついた。ところが現世に戻ると三年が過ぎていた、と手を打った。 竜宮のことは誰にも言うなと口止めを堅くされたので最初黙っていたのだが、もう語らないではおけまい、とありのままを喋った。その後生まれた子供は兄弟とも口がきけない状態だった。竜宮の祟りと噂されたが、六太夫は七十で、天和二年現在まだ存命である(新著聞集) 理由をこじつけた悪い噂にもきこえる。 ![]() < 前のページ次のページ >
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