窮する村、人を冷凍し年を越すの話

奇妙な話がいい、人が死ぬ話は厭、となると江戸怪談はかなりのものが削がれてしまうことに気づかされます。江戸はパラダイスなどではなかったのです。死ぬ社会だった。死ぬ話を避けて奇妙な話を求めているうちアメリカのフォークロアに行き着きました。アメリカは歴史が浅いとはいえ400年近くは重ねてきているわけで、アングロサクソン+ピューリタンの種が撒かれてのち十分独特の伝説が生まれ育つ土壌がありました。広大で極端に人が少ない、そういう土地ならではの因習的で残酷な話も。これは少し毛色が違うのですが。

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加藤恭子、ジョーン・ハーヴェイ「ニューイングランドの民話」玉川大学出版部より「冷凍人間のはなし」を参照。但しこの奇怪な話は創作であることが突き止められている。民話として普及した話は少し違っていて、ここの採話によるとニューイングランドの厳しい冬を越せない村では老人を氷詰めにして外に置いておいた、春になると溶けて生き返る、という「姥捨て山」さながらの話になっている。これはしかしジョークとして受け止められてきた話のようで、採録者の「日本の姥捨て山と同じ困窮譚ではないか」との問いかけに、老いた話者は明確に「違う、生きて帰るし、事実でないのは明白だから笑える」というように答えたという。結局この「冷凍人間」の伝説は1939年の新聞記事に載ったA.M氏なる人物の叔父が日記に書いたという話が源にあり、それがここにラクガキした話なのだけれども、更に遡り1887年の新聞にアレン・モルスが載せた記事で、創作だと断定されているようだ。

いかにも都市伝説ではないでしょうか。アメリカは都市伝説という概念を生んだ(人がいる)国でもありますが、小さな新聞記事が元になり、半世紀後に再度新聞に載ったとき話題を呼んで、読者が老人になったころ尾鰭を付けて、またアレンジして広まっていったもの・・・日本のタイムスパンでいうとしょせん明治時代の話じゃないかとなるんですがよく考えてみましょう。自分の人生の時間と照らし合わせて、半世紀はけして短い時間ではないし、100年といったら全く接点の無い世代同士になるくらいの期間です。日本は狭いから、距離的感覚の違いもある。アメリカで荒野に放り出されたら生きて帰れる保証はありません。距離+時間、それが日本における時間だけのへだたりの感覚よりもずっと大きい。非常に厳しい冬を抱くニューイングランドのヴァーモント州の伝説としてこれは説得力のある話で、過去に困窮を極めた村がいくつもあり、老人や力の無い者は足手まといタダ飯喰らい、だからせめて食料に乏しい冬の間は「凍っててくれ」・・・

アレン・モルスがいけないのだ。
Commented by kenz_freetibet at 2008-09-03 12:03
日本の電磁冷凍法だと本当に凍眠出来るかもね。
俺実験台になろうかなぁ。
木星の片道旅行の後電磁冷凍で周回軌道に。
そして未来の技術に期待をするのだ(^◇^)
俺は木星の表面を見られたらそれで良いけどなぁ。
Commented by 岡林 at 2008-09-03 17:17 x
冷凍人間ネタは土葬・キリスト教文化ならではの「エンバーミング」的発想でアフリカ文化の混交をへたゾンビものと同じ死者復活譚です。この本が面白いのは古いアメリカ人でもキリスト教を信仰しながら本来キリストの復活まではこの世にとどまれないはずの幽霊(生ける死者)を肯定する矛盾を書いているんですよね。冷凍人間は実際は重要な細胞組織の全てを破壊せず維持できない以上、少なくとも「生前組織が壊れないうちに保存処理をなされていない限り」再生は無理な筈で、夢のようなもの、オカルトのものなんだと得心しました(;^_^A人体実験をできない以上(短期間は事例がありますが)何とも夢です。
by r_o_k | 2008-09-03 02:12 | <風流>怪奇漫画落之書 | Comments(2)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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