2010/9/29「力ばか」
2010年 09月 29日
類話の多い江戸時代の都市伝説みたいなものだが、ハーンは同時代の話としてこれをつたえている。先の戦争前まではどこの町村にも普通に「ばか」と呼ばれる人がいて(いや今もいるのだが目につかなくされている)、名士の家では血統の穢れと忌み嫌われたがたいてい町じゅう村じゅうの人から愛されて保護されていた。共同体が共同体として機能していた時代のよき名残であり、ハーンもそのありようを書いているわけだが、やはり脳の病気であり、命みじかく死んでしまったその子の手に親が書いた「力ばか」・・・自分の名前を後生も忘れないようにとかいった意味があるようだが・・・その文字が、程なくお金持ちの家に生まれた赤ん坊の手に現れた。今度はちゃんとした子に生まれ変わったと前世の親は喜ぶが、実子の手に「ばか」という文字があって気味のいい親はいない。いくばくかの金を渡し、人を使って「力ばか」の墓の土が持ち来られる。昔からこのようなものが浮いた場合、前世の人間の墓場の土を使えば消えると言われているのだ・・・恐らく最初は何か民間仏教的な理由があったんだと思うが意味性が失われ単なる習俗として伝えられている。はたして手に土をこすると文字は消えた。
力は消えてしまった。
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