「壁男」

駄作。原作に失礼。原作は最後の15分くらいにしか使われず、ひたすら映像学校の生徒の如き自己満足ふう心象表現と、生硬で教科書的な運びしかない映画。1時間ひたすら「前書き」を見せられて腹がたったが、原作を物凄く短く(暗示的ですらなく)さっさと詰め込んでのちの夢オチには更に腹がたった。これはホラーなのか?何の映画なのか?

何の発見も無い。映画製作陣が原作者の意図を逸脱して意味内容を含ませようとした相手が「壁」なだけに尚更空疎だ。ひたすらスナップ写真を並べるとか、よくある映像にうんざりである。頭でっかちなまま物語に昇華できないなら原作どおりに作ればいいのに。「壁男」を見せないことで壁男の存在感を煽ろうとするには技術的に手に余ったようである。

そもそも壁の世界と現実世界の境目が曖昧になり、しかし最終的には所謂「異界」として切り離されていくところに魅力がある作品世界なのに、現実世界側にそもそも現実味が無いから何が面白いのかすらわからない。演技者も演技者だ。もっと何か表現すればいいのに、どこかで見たような小演劇を見せられた気分である。

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だいたい、絶対に交じり合わない世界と世界の間を乗り越えてつなげていくという、一種理想主義的な社会共同体のありようを描いてみせることで何かを言おうとする、諸星先生の得意な方法を理解していないのではないか。「生物都市」から「バイオの黙示録」に至るまで(ワンパターンとか言う人は無視)、宮田先生の境界論を逆手にとったようなお話こそが面白いのだ(「お話」であるところがミソ、因数分解不可能な哲学性とかアートという詭弁に逃げることなく、この人は寧ろ70年代的な”ちゃんとした物語”を作る人である)。物語性を取り払ってしまったら何が残るのか。ただ設定の珍奇さだけ、なら見世物小屋の木戸賃程度しかとってはいけない。

主人公がお洒落なカメラマンというのもいかにも食傷である。お洒落な諸星作品、というのは噴飯もの、だが案外流行を取り入れたがる原作者の指向からして外れていないとは思うが少なくともそこに重心を置いては面白くないと思う。野暮なくらい地味で汚い現実世界の描き方だからこそ、その塵と埃の間に「ありうるかもしれない」異界の現実味が際立ってくる。お洒落にわたっていくヒーローものを描きたかったわけでもないだろう。せめてカメラマンは売れない風景カメラマンであるべきだし、小野真弓は地方局アナ臭を強く出すべきだった。二人の飲むバーには派手な色調のママとチーママがいなければならない。当然店内はワインレッドで統一されているし、カラオケ台が設置してあるはずだ。お洒落な広いベッドルームでいちゃつくのではなく、築30年のマンションの寝室でいちゃつくのだ。
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映像屋やカメラマンやマスコミなんかを設定人物に取り込んでいる時点でウンザリ。お手盛りと言ってもいい。こういう映像作品を作ってはいけない。映像屋が映像屋のモノローグをして何が面白い。☆なし。
Commented by kenz_freetibet at 2008-07-27 17:24
姑息なやり方で好きではない。
実力のない監督のありがちなやり方ではあるが。

ところでこの壁男。
あちらの小説で死んだ女房との筆談だっけかな?がエスカレートし最後にとうとうって話とちょっと似たところがあるなぁ。
なんて題名だったかな。
Commented by r_o_k at 2008-07-27 22:40
ああ、それ読んだ気がします、頭の中で壁男とは結びつかなかったですけど。ヴィジャ盤で会話?とかだったような・・・古典的な小説じゃなかったでしたっけ?
by r_o_k | 2008-07-26 22:59 | 映画 | Comments(2)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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