江戸弘前の夜はなし。

嘉永年間のこと。

青森の近江屋太作という者の家に、燕が巣を作って卵を孵したが、雄鳥は猫に獲られてしまった。

3,4日後、この雌鳥は他の雄鳥とつがいとなって帰ってきて雛を育てたが、未だ巣立ちしないうちに後の雄鳥と懇意になって卵を孵して共に養った。更に6,7日も過ぎると先の雛が理由もなく巣から落ちた。三羽とも死んだ。太作の老母は大変不思議に思い、死んだ雛をとり上げて口を開いてみると、

中には砂石が満ちていた。

後に生まれた雛は難なく成長し巣立ちした。

・・・

先の丙辰の年の五月。下提町某の門に立っている幡の下に五、六匹の犬がいて、幡を見上げて前に行き後ろに行きしながら何かがいるかのように吼えているのを、近所の人も往来する人もひどく怪しみ、何物があるのだろうと見上げても何も目に入るものはなく、某の用人が犬を追い散らして場は鎮まった。五、六年前にもあったことだという。

同じようなことが私の屋敷にもあった。

隣境に柿の木が一本ある。犬二匹がこの木を見上げてしばらくいたく吼えていたことがあった。私が見上げてみても何も怪しいものはない。余りの喧しさに犬を追い払ったが、すぐに裏境の垣根の下に駆け周ってまた激しく猛り吼え、ついに垣根をくぐって裏の屋敷で吼えていたところ、主人に追い立てられて停まった。文政七、八年の頃のことである。

・・・

小国沢目山本村の者、二重堀の城跡に行って見ると、板のような石が大小混ざってたくさんあったので、造作の用に使おうと思った。

あくる日、馬5,6匹を引いてこの場所に来たところ、昨日見た石が一片も見えない。不思議に思って馬を堀の傍らに放し、区画内をあまねく探したが似た石すら見当たらず、狐に魅かされたと思って馬どもを曳いて帰ろうとしたところ、

四足の蹄がいずれも悉く鮮血に塗れていた。

ぞっとして総毛立ち片時もいられず早々に逃げ帰った。これは嘉永の末年のこと。

・・・

福館村某の妻、うるう月のある年は必ず狂人となり年が終わるまで続く。

明けて正月からは元通りに戻り全く普通の人となる。

その狂いの起こるときは家に留まることなく、どことなく巡り野山や林の中あるいは祠などに伏していて、腹が減ると何処へも行って物乞いをして、いろいろなたわごとを言って歌い踊り泣き笑い、おかしなことが多くある。

しかし遠くは走らず、一、二里の近い辺りだけをさまよっている。

最初に狂病の起こったとき、子供らや夫も様様に抑える手立てを講じたけれども、いささかも効かず狂い出したため、縛っておくわけにもいかず、また人の迷惑になることもなかったので、立ち寄ると思われる家々の人に予め頼んでおいて、時々謝礼を渡していた。

地元の人はこれを福館村の閏馬鹿と呼んだ。

嘉永七寅年もうるう年であったが、もっぱら狂い歩いていたところを岡本三弥という人が近くに見て事情を聞いたということで語ってくれたことだ。

・・・

文政の頃のこと。会田某という人は鉄砲の名手であったが、ある日道楽で撃ちに出て八幡宮の林に至り、おしどりのいるのを見て一撃にしとめ、すぐに立ち寄って鳥を見ると、首が千切れて近くに見えなかったから、そのまま打ち捨てて帰った。

そして翌年の同じ月日、図らずもまた八幡宮の林に至って鳥がいると眺めていると、又おしどりがいたので早速撃ちとり取り上げて見ると、今度は雌鳥で、

羽交に骨だけになったおしどりの首を隠していた。

会田氏はふと去年のことを思い出し総身が粟立ち思わず冷や汗を流した。その肉を食う気も起こらず屍を埋めると帰った。そしてこのことを子供に語って道楽で撃つことを禁忌とし、今はこの家で殺生打はしなくなったと水木某が語った。

・・・

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(谷のひびき「燕継子を殺す」「犬無形に吼える」「城跡の怪」「閏のある年狂人となる」「羽交に雄の頸を隠す」より抜粋抄訳)

弘前の怪異を集めた珍しい江戸時代の随筆。江戸に有名な話も混ざっているのが都市伝説ぽい。
Commented by kenz_freetibet at 2008-06-17 00:42
新説!?日本ミステリーってのが結構意欲的にがんばっているね。
深夜枠(静岡では)でかなり熱くやっているぜ。
そちらでもやっているのかな。
ここ静岡ではテレ東系がなくばらばらに他の局にばらばらに配置されているのでこの番組がどこのか分からない。
一応TBS系のチャンネルで放送されているのでTBSの制作かもしれない。
Commented by kenz_freetibet at 2008-06-17 00:44
あ!ぐぐれば良いのだよねw
テレ東だった。
Commented by 岡林 at 2008-06-17 09:00 x
6/10の20:35の日記の最後に書き足している部分がこの番組の感想です(;^_^Aけっこう力が入った番組なのであの時間帯(九時から)でネットしてるのかと思いました。みのもんたの何度かやったスペシャルがトンでも満載で凄かったんですよね。あの番組、あくまでロマンで、けしてガチじゃないというのがいい。あんな暴論だらけだと信じる人はいないでしょう。。さきたま古墳群を古代日本王国とは。。
Commented by kenz_freetibet at 2008-06-17 18:08
吉村さんは現代のシュリーマンだからね。
TV出演は発掘費用を捻出するための手段。
だからちょっと怪しいものでも出ちゃうのだろうね。
それに考古学者は飛躍的な思考も大事だからね。
しかし今は吉村さんがいるからいいけど、あの人が引退したらどうなるのだろう。
彼のようにテレビ受けをするようなのが部下にいるのだろうか。
そう言う人も育成しないといけないなぁ。
Commented by r_o_k at 2008-06-17 18:19
考古学というのも分野的にびみょうで、吉村先生も考古学出身ではなかったのではないかなあ・・・海外だと文化人類学とかいろいろ別れるみたいで、アーケオロジーやってます、とイギリスで言ったら誰も知らなかった、ということが遠い記憶にあります。もう全然違う分野になっているようです。吉村先生の稼ぎ口は「世界ふしぎ発見」とたけしの正月番組くらいだったのが広がってきたんですねw20年前くらいは心霊番組で先生の霊を見た話をして大槻センセイに批判されていたなあ。

考古学は結局山師的な部分は否めないので、飛躍的思考はいいんだとおもいます。今学生だったら面白かったろうなあ。インディ・ジョーンズも誇張ではないくらいの。

後進はいず、その国の考古局に引き渡される、なんていうこともあると思います。
by r_o_k | 2008-06-16 23:55 | 不思議 | Comments(5)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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