ほんとうの「隅田川」とほんとうの「梅若塚」

梅若伝説、というのがある。

室町時代に成立した謡曲「隅田川」の原話とされる。「人さらい伝説」としては広く知られたもので、類話が芝居、小説によくとり上げられた。

平安の昔、京都北白川に住むやんごとなき身分の母子。父の吉田少将は既に他界していた。その子は梅若丸といったが、人買いの男より母が病気と聞いてついていき、そのままさらわれてしまった。遠く関東にまでつれてこられたところ病に罹り、隅田川に捨てられる。幸いにも村人に救い上げられたが12で命を落とした。一年して一人の都姿の狂女が現れた。一本の柳の植えられた塚にて一周忌法要が執り行われているところ、わが子の姿を見たと言い塚にすがる。これこそ子を追ってきた母の花御前であった。そののち尼となって庵を構えたが、悲嘆の余り塚の近所の沼池に身を投じた。池にうつったわが子の姿を追ったともされる。芝居では花御前は班女という名をつけられ(これは京都の伝説的な女名で同名の女による怪談めいた話があるがそれは本サイトを参照されたし)尼となっては妙亀という名を得たとされている。妙亀もまた塚にまつられた。

これは現在東京は隅田川東岸の鐘ケ淵近くにある木母寺の若宮塚の伝説として知られている(関連エントリ)。石浜の妙亀塚は妙亀の塚とされている(実際は上に室町時代の夫婦の板碑塔婆が建てられていることからその頃のものと思われる)。池は鏡が池と呼ばれたが実在しない。隅田川岸は広い荒地で、浅芽が原といった。現在、浅芽が原の最後の痕とされるところに小さな公園と、「姥が池」がある。この姥が池が鏡が池だという説もあるが、同じく伝わる鬼婆伝説と混同しているかもしれない。そのあたり、浅草寺東になるが、花川戸という地名である。

ところで、埼玉県春日部市にも浜川戸という地名がある。古利根川という、かつての「暴れん坊」利根川の流路とされる比較的大きな川の、小さな、しかし深い支流は古隅田川といい、暗渠化されているところもあるが、残っているところもある。その分岐する西側が浜川戸になっている。もちろん運輸交通の要である川では珍しくない地名ではある。しかし、この「ふるすみだがわ」の先に、もはや移転して(現在中学校の校庭の場所)小さな祠になってしまっているが、三囲神社という社がある。言わずと知れた浅草の対岸、向島の三囲神社と同じ名前。ここにも同じような神狐の奇異な話が伝わっている。
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春日部のあたりは縄文時代には入り江であった。時代が下っても川は大きく乱れ、何度も流れ直している。それだけ起伏無く平地であり、人が住むにも便利な場所であった。そして交通にも便のいい場所であった・・・まだ海が大きく入り込んでいた江戸よりも。

そう、梅若伝説はこの「古隅田川」の伝説としても残っている。

現在の古隅田川は古利根川の単なる支流だが、流路を頻繁に変えていた室町以前においてはここが正真正銘の隅田川であったという(ちなみに「元荒川」もある)。

これは恐らく江戸時代になって考証家が言い出したことだと思われる。だが伝説がもし架空のものでなかったとしたら、説はおおいにありうるのである。

古隅田川の流れる先、新方袋という地は鏡が池の跡が近年まであったという地というが、川端に、そのまま梅若塚も現存している。
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伝承自体はまったく謡曲のとおりである。したがって江戸のものと同じである。
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塚は満蔵寺という古刹の門前にある。柳が一本植えられている。
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春日部には古の伝説が多く残り、江戸以前の関東の香りが残っている。

機会があればどうぞ。



蛇女房伝説の赤堀池のあった祟蓮寺
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古利根川の碇神社のイヌグス
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古利根川
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古隅田川
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春日部重行公首塚(最勝院)
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浜川戸富士塚(重行公居館跡)
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春日部八幡神社
~富士塚のすぐ脇。神馬の轡の音が聞こえるという。見事なイチョウは鎌倉の鶴岡八幡宮から飛んできたという「飛び銀杏」。参道入り口脇には、在原業平が都鳥の句を詠んだのはこの古隅田川近辺の地であるという説に基づいた江戸時代の古碑がある。
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業平橋
~業平が都鳥の句を詠んだことにちなんだ橋。古隅田川にかかる。ちなみに古利根川にはユリカモメ(一般には「=都鳥」)がいる。
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元秋葉神社の夫婦松
~銀杏と松が絡み合った珍しい古木。秋葉神社は区画整理のため移転しているが、落ちてきた天狗が静岡から勧進したもので、のち火事のとき屋根に立って風を起こし消し止めたという伝説がある。
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Commented by wither108 at 2008-02-21 23:05
なかなかシャープな写りだね。

俺はまたカメラとレンズを買ってしまった。
届くのは来週頭かな。
その中に面白いレンズがある。
ヘキサゴン17mm/F16
通称「ボロゴン」(ホロゴンじゃないよ)
コニカのWaiWaiワイドと言うレンズ付きフィルムのプラスチックレンズをLマウントやMマウントに装着可能なように個人が製作したもの。
知ってた?
俺は知らなかった。
黒塗りのCanonの往年のレンジファインダーカメラCanon7とセットで売りに出ていたのだ。
絞りはF16に固定。
ピントは理論上0.4mm(0.4cmの間違いか?)あるいは40cmか?どうも資料が乏しいのでどれが正解か分からないけど、そのうちのどれかの距離から無限までのパンフォーカスレンズ。
かなり暗いから高感度フィルムじゃないときついね。
このレンズがzちょっと楽しみ。
写りはネット上で見るとあんまりシャープさはなさそうだな。
まぁプラスチックだし。
もう一つはOM-2だ。
これで俺もOMユーザーか。
OMでゆったりとした撮影時間を過ごしたいものだ。
Commented by r_o_k at 2008-02-22 00:51
ペンタックスの水中兼用簡易デジカメです、コントラストきつめにうつりますけどこの日は天気もよかったようです。

>コニカのWaiWaiワイドと言うレンズ付きフィルムのプラスチックレンズをLマウントやMマウントに装着可能なように個人が製作したもの。

!すごいですね、というか基本技術があればそんなに難しいことではないのでしょうか。固定絞りですか。なかなか撮影には手のかかる代物ですねー。。
by r_o_k | 2008-02-20 23:41 | 旅行 | Comments(2)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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