2001/1/1夢幻
2001年 01月 01日
桟橋に水兵が立っていた。
光の鱗がさざめくように穏やかな海。
彼が桟橋に立っていて、少女はボートに乗っていて、互いに見詰め
合っている。少女の様子は良く分からない。小舟とドレスと日傘の
シルエットが、つと水面を滑って、彼を暖かく包み込む。
ただ立っていた。
少女は黙って彼を見ている。
少し、波が立つ。
少女の思い出の中に、彼はゆっくりと消えてゆく。
微笑みだけが残る。
彼は海で死んだのだ。
・・・私はそこにいたのかもしれない。
了(1999・11)