<怪物図録>五つ首、ゴンゴばかやろ、子を抱く先妻、井戸の中の家、人語を解する猫

五つ首
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那覇のとあるホテルは御嶽を潰して建てられた。裏に入ると雑居ビルが犇めくような場所で沢山人死にの噂がある。ゴミに埋もれ祠が作られているが、額に梵字入りのお札が貼られたマネキンの首が、5つ供えられている。方言で落書きされ内地の坊主や地元のおかしな信仰も集める。首吊りのあった部屋ではその男と何故か上半身裸の女が現れた 。(小原猛「沖縄の怖い話 弐」三十〜三十二)

現実的に、盛らずにこうだろうというありさまを書きたいのだが、複合要素がからみあい、わからない話はどう書けばいいのかもわからなくなる。資料を見ないことを徹底してるので、記憶にない光景はむつかしい。

ゴンゴばかやろ
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昔ある田舎にゴンゴという目の見えない乞食がいた。それが死んだ時、いたずら者が寄ってたかって遺体に「ゴンゴばかやろばかやろ」と落書きして葬った。しばらくして大名に世継ぎが生まれたが、その身体にありありと「ゴンゴばかやろ」の文字が現れてきた。あの乞食の生まれ変わりだと皆怖れた。(長尾豊「傅説民話考」S7)氏が幼時に伝え聞いたもので、古来生まれ変わりの説話のバリエーションとして因果応報譚がひっついたものという現実的解釈を与えているが、現象としてあればおぞましい。弱者を虐げ遺体損壊し挙句、統治者である殿様に祟るのである。

子を抱く先妻
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五世尾上菊五郎の又聞き。小道具の清という男、貧するも顔も声も良く、女のほうから言い寄られる質だった。女房も好かれて持ったが妊娠中、遊びの茶屋で女中と心易くなり、家に帰らなくなった。女房は産む前に死んでしまった。女中は跡に嵌り妊娠し、安産した。当時は産後しばらく籠で寝る習慣があったが、ある夜赤子を置いて水を飲みに立って戻ると、籠の中で見知らぬ女が我が子を抱いていた。引ったくるとすっと消えた。清は病付いた。(「百物語」幕末明治百物語、一柳廣考、近藤瑞木編)

井戸の中の家

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小石川植物園周辺は徳川綱吉の白山御殿だった。明治時代に不思議な抜け穴が見つかったが、こんな話がある。享保年間すでに御殿はなかった。元敷地に某が井戸を掘らせたところいくら掘っても水が出ず、ふと横穴に出た。井戸掘りが覗いてみて仰天、家が見える。主も降りるとそれは書院造の座敷だった。入って奥に行き襖を開けるとまた座敷で襖がある。それも開けようと思うと隙間から気味悪い風が吹いた。襖の草花の絵の端を切り取っただけで、慌てて埋め戻したという。(矢田挿雲「江戸から東京へ」第五巻、小石川区)同様の話が藤岡屋日記にあるが、浅間山噴火で埋もれた家で仙人と化した二人が備蓄で生きながらえているところを発掘されたという話である。こちらは整然として誰もいないところが物凄い。白山屋敷自体、綱吉元服後寄らず、没後荒れ果てたのだから、地下の屋敷が綺麗なのは…


矢田氏はこの巻の大部分を切支丹弾圧に割き、東京市下には珍しい小石川の渓谷とて切支丹屋敷界隈を描いている。かつては陰惨な(細部の信憑性には疑問もあるが明確な歴史的描写があり、狂気の時期の去ったあとは一律陰惨でもない一時の弾圧だったことが解るが、いずれ高札が幕末まで掲げられ刑場としての機能は残った)・・・川に血の流れる様な土地に相応しい友人二人の名、その一人が田中貢太郎とある。


人語を解する猫

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神奈川の主婦N子の家に老猫がいた。衰弱して定位置の座布団に腹這いになり動かなかった。ある朝掃除をしていると急に立ち上がる。体を伸ばして欠伸する。珍しいと目をそらすと、「いぬ」と声がした。見回しても誰も犬もいない。空耳かと掃除を続け、戻ると座布団はもぬけの殻。それきり戻らなかった。(「妖怪現わる」中山市朗)猫が命の最後に一言だけ人語を喋ることができるという話は、江戸時代にはしばしばあったが現代では珍しい。いぬ、は往ぬ、の意味だったのではないかと解釈したという。猫は昔は人に死ぬところを見せないと言われた(内田百閒のノラもそうだ)。座布団は燃やしたとのこと。


幼少のころ二子玉川園という遊園地があった。広々としジェットコースターが名物だったが、半分は体育館やふれあい動物園となっていた。山羊の群れに貰った草をやっていると、ひときわ年を取った様な山羊が若い山羊に押されてなかなか首が届かない。ふと、

俺にもくれよ

と喋った。ビックリして逃げ出した記憶がある。



by r_o_k | 2017-07-22 17:32 | 怪物図録 | Comments(0)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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