怪物図録:さいきんのぶん(沖縄の天女、愛媛の生首、江戸の暗部、忠義の猫、南相馬の龍)

スグルクガーの天女
本土にも沖縄にも多いいわゆる天女の羽衣伝承で、衣を見つけると迷いながらも結局天に帰ってしまったのが銘苅のスグルクガー(ガーは井戸、泉)の天女伝承であるが、南風原の宮城にあるウスクガーにおりた天女はそのまま衣を見つけることなく夫婦で官職を得(天女はノロとなった)天寿を全うしウスクガー上の一ツ瀬岩(沖縄戦で破壊)の中に葬られた。クバドウ御嶽の伝承である。また竜宮伝承も多くあり、水と空ということで中国系の龍神のたぐいの異説が本土の伝承と結びついた感じ。
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松根の生首(愛媛の伊達家臣系武家の旗印になっていた生首図で大きなものだが現存する。武勇や脅しの効果を与えるものとしてもかなり異様な、そして実物はとても厭らしい目付き口元をしているが、これは先祖がある家の周りを回る者に訳を聞くと自分はこの家の主人に恨みがある、そこの札を剥がしてはくれまいかというので剥してやると、目を見開いて屋の中にとびこみ、ギャッと一声、幽霊は屋のあるじの首級を抱えて出てくると、礼だと言ってその生首を渡した、藪に塚を作り篤く葬るとその姿を写し旗印とした、という伝承に基づいている。よくある怪談を利用して広告的に使ったとも考えられるが、家臣格の家柄であり、何も根拠がないとも思えない不思議な物で、実際に見ることもできる。)
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線香畑(元もと山谷堀河口日本堤下にあった西方寺、通称土手の道哲、投げ込み寺の、けして広くはない墓地に無数に埋葬された新吉原遊女の供養のさまをそう呼んだらしい。良い伝承と悪い伝承があり、新吉原の投げ込み寺は有名な浄閑寺ほか3つあったというが、比較的古い時代、三浦屋の万治高雄太夫の儚い命を当時精一杯の菩提を弔った二世道哲和尚が庵として営んだのが始まりで(しかし万治年間のうちに亡くなったため二人の恋仲説も生まれた))、それがなぜか江戸後期には死んだ遊女を文字通り墓穴に投げ込んでは店より手間賃を取って儲けていたなどという話が出て、明治改元後は浅草聖天町の名所として「投込寺」等の道標の刻まれた大きな鉄灯籠が、移転先の巣鴨に残っている。子供合理塚(遊女は子供と呼ぶ)もその名をいっさい示さずに移されているが、一大遊廓の投げ込みの供養塔としては浄閑寺とは違い、普通の無縁塔の規模とさほど変わらず、たとえば品川や川崎の夥しい如意輪観音石仏群とは見劣りし、新宿のただの石塔だけの供養塔よりましというくらい。上等ではない投げ込み先だったということか。ところで幽霊の話などはないが、移転前は何かあったような感じがする。それほど山谷堀は荒れた土地だったし、貧乏な北斎もここで死んでいる。)
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我善坊谷の大鼠(東京都港区麻布の我善坊谷の商家の娘にまつわる伝承として戦後すぐの書籍に載っているが、江戸時代には各地同じような話があったとみえて有名な怪談集に別の場所のこととして載っている。娘が愛玩する猫がまとわりつきの度が過ぎてトイレまでついて入るので化け猫とみて殺そうとしたところが、ある日に屋敷の屋根裏に駆け上り潜んでいた人食いの大鼠と仲間とともに格闘して死んだ。娘を監視して守ろうとしていたのである。家は猫のために塚をたてた、といったものである。猫と鼠を逆転させた話が戦前の佐藤隆三氏の著作にみられ、このあたりは混乱があるようだ。)
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大悲山の龍、福島県南相馬市小高には大水を呼ぼうとした龍退治の伝説があり、僧侶の自己犠牲譚と結び付けられ「大悲山大蛇伝説」と総称されている。体中を釘で打たれ最後はバラバラになって降ったところが、各地の地名になったといわれる。八丈島に同じような、身体のバラバラになって発見されたものがその身体の部所、たとえば上顎ならウワゴツソウなどその名を取って地名としているという、村作りの源にまつわるような話があり、国造りに遡る古い伝承が変容して各地に伝播したのかもしれない。龍には雨乞いや風水的な意味もあり、鉄釘は魔封じ。
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文筆峰(久米村第一の風水)、通称「仲島の大石」、とくに人魚の伝説とかありません(どこかにこういう話があったと思って書いたのだが忘れたので、今は何度めかの裸状態で大造成を目の前にしているこのノッチ岩をえらんでおきました。形はペリーの時代にはすでに今のどっしりしたものになってますのでそこもちがいます、そもそもノッチは水中まで伸びない)那覇
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by r_o_k | 2017-06-10 00:51 | 怪物図録 | Comments(0)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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