怪物図録「天竜川の竜宮」

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鹿島村しんかはきの明神前渡し船に、賀茂村の平野六太夫という者が乗ったが、川の真ん中で、船がわけもなく動かなくなり、同乗者みんな顔面蒼白になった。六太夫、不意に船から飛び込み水底に沈んだ。すると船は簡単に動き出し向こう岸についた。彼の家にこのことを伝えると、とても悲しんだが、どうすることもできず、月日だけが過ぎ去る。三回忌になって、法要をしていたところ、ふらっと六太夫が帰ってきて、これは何事かとみな驚き、もしや狐狸の妖怪かとためらっていたが、何の不審なこともなかったため、一同安心した。

理由を問うと、六太夫は、私は別に何を思うでもなく船から落ちた。すると竜宮界に入り、竜神からしきりにわが力を借りたいと言われる。とにかく川を渡せと様々に論じあった揚句、二日くらいでやっと話がついた。ところが現世に戻ると三年が過ぎていた、と手を打った。

竜宮のことは誰にも言うなと口止めを堅くされたので最初黙っていたのだが、もう語らないではおけまい、とありのままを喋った。その後生まれた子供は兄弟とも口がきけない状態だった。竜宮の祟りと噂されたが、六太夫は七十で、天和二年現在まだ存命である(新著聞集)

理由をこじつけた悪い噂にもきこえる。
by r_o_k | 2010-03-01 03:09 | 怪物図録 | Comments(0)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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