石鹸女

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死蝋という言葉を最近聞かなくなった。遺体の脂肪分がローソクのような成分に置換され、干からびて白骨化するより先に、真っ白い肉を保ったミイラの感じになる。。。更に稀に[石鹸化]現象にまで行き着く。全身が成分的に石鹸と化したソープウーマンというミイラの名を聞いたことがあるだろうか。米国の研究所に標本展示されている古い遺体で、南北戦争頃の上流階級の中年の女性が、贅沢暮らしの結果得たふくよかな体躯に満たされた上質の脂肪分を、埋葬後絶妙の環境のもとで腐敗させることなくそのまま石鹸と置き換え、生前の姿をミイラなりにではあるが保ったまま、現在も眠り続けているのである。珍しい現象ではあるが、ある程度の蝋化はよくあることで、そのあとにどろどろと崩れることなく原型を保っていて、たまたま棺をあけて目撃されたところが、キョンシーだのゾンビだの吸血鬼だのキリスト教の教えに反いた悪魔だの、もしくは逆に神仏に加護された不滅の尊いものと言われるミイラになる。見る人によって評価は別れるが、ほんとに稀な条件下で原型をほぼ保ったままとなる遺体もあるわけで、その皮の下には石鹸が詰まっているかもしれないけれども、とりあえずは、怪しきものと思われて仕方ないだろう。中には人為的に原型を留める張りぼてのようなものもあるようだが。。。

頭蓋骨の上に、あきらかに石鹸に見えるような、白いぼそぼそで肉付けされた、復顔術を施したかのような遺体が見つかる。

鈴村喜平さんはここのところ、風呂に入ろうとするたび石鹸がなくなっていることに悩まされていた。十数回にも及んだという。余りの奇異に、変な噂をたてられないよう近隣には黙っていた。

黙っているのには別の理由もある。決まって2のつく日になくなるのである。11月12日、ふと口にしたことがある。同居していた娘の喜代子のことだ。奔放な性格の喜代子は高校1年生、同じく同居していた祖母のうるさい小言に嫌気がさし家を出て、そのまま行方不明になっていた。祖母は喜代子がいなくなった日である2のつく日には、いつも線香をあげ無事を祈っていたのだという。いなくなった日というのは、昨年の11月12日に他ならなかった。

12月12日、父親の喜平さんはいつもそんなことはないのに、朝、何気なく仏壇の前に座っていた。蝋燭の火をつけると、風もないのに揺らめいた。嫌な予感がしたという。捜索願を出してから1年もたつが何の手掛かりも無い。

午前10時半、森戸山の丘陵の造成地で騒ぎが起こっているという話を聞いて、喜平さんは鍬をほおり出し、まっすぐに向かった。

作業員が駆け寄ってきた。死体が出てきたんだよ、若い女の。

喜平さんは仲間と現場へ赴く。人間の形をした、塊のような物が見えた。なるほど泥だらけのミイラに思える。

だが泥の上からでも、白い顔がはっきりと見えた。

喜代子にまちがいなかった。

こんな古い遺体でも、はっきりと若い女、それも紛れも無く娘に見える。

奇妙な塊を持ち帰った警察は鑑識にまわした。鑑識医は驚嘆したという。見たことも無いものだ、石鹸状になった若い女の死蝋だ?

犯罪史の文献にも無い、何百万人に一人いるかいないかの珍しい状態だという。他殺らしいが犯人は不明だった。しかしなぜ湿気のある土中で1年、こんなに完璧に石鹸と化していたのか説明がつかない。近所では顛末が知られるにつれ、噂がたった。

石鹸が紛失する出来事が頻発していたわけは、喜代子が持ち去っていたからではないか?

腐り落ち失われ行く顔の肉を補うため、、、石鹸をべたべたと、貼り続けて、いつか見つけてくれることを祈っていた、死蝋と化してまで親に会いたいという一念であったのではないか、と。(日本の怪奇)
Commented by kenzjpn at 2009-11-21 22:53
なんか検索してはいけないワードがあって、その言葉を検索すると緑色になった死蝋死体の写真があるって聞いたなぁ。
俺はそう言うのはあんまり見たくないんで検索してないけどね。
Commented by r_o_k at 2009-11-22 02:24
今は無いんじゃないでしょうか、フェイクでも通報されると思います。しかし児ポ法みたいに猟奇趣味もいつか徹底規制されるんだろうなあ。それが正しいと思いますが。ちなみに私も趣味じゃないです。しかし題材として避けられないです。
by r_o_k | 2013-06-30 16:24 | 怪物図録 | Comments(2)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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