「土佐の怪異的地蔵その他」

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土佐は他の土地からの人の流入が多かったせいもあって全国の伝承が変化して転用される例が非常に多い。天女の羽衣や耳無しほういちの話でさえ土佐の伝承として語り伝えられており、独特の怪としては七人みさきくらいではないか。

見渡し地蔵は高知龍馬空港そばに戦後移転したものだが、引っ越しのさい「ばちがあたるならあててみよ」と言った者の足が即座に動かなくなったという。しばてん地蔵は土佐に多い河童系妖怪をまつる地蔵のひとつで、五台山下に今も残る八州の狸弁財天のあたり、しばてんが化かした酔っ払いがよく地蔵と相撲をとっていたという。

ちよ地蔵は土佐にたくさん残る陰惨な、特定の人物の供養のためのもののひとつ。幕末頃朝倉で川を鎮めるため水神に人柱をたてることになったが、選ばれたちよという娘は母親の面倒をみてもらう約束でそれをのんだ、しかし約束は守られず、水害はおさまらず、村人は罰とみなしちよと母親の供養地蔵をたてた。水難よけ地蔵として今も信仰される。勝手でひどい話だ。新之丞地蔵も怪ではないがひどく勝手な理屈で、400年前に行き倒れていた遍路が村人に介抱を受け、礼にと苦労してたいへん美しい七色紙のすき方を開発し教えた。国入り直後の山内一豊の耳に入ったところ大喜び、土佐の特産にせよとの御達示、しかし役目が終わったとして遍路は国に帰るという。よそに七色紙を伝えるのを防ぐため、藩命で遍路は斬られた。災難よけの御利益とは皮肉。

空とぶ地蔵は鎌倉時代に日下の農民が家庭内のいざこざで母妻を殺した供養に京で作ったしっかりした木彫で、しかしじき堂ごと忘れ去られ荒れ果て猟師の獲物さばきと食事の場所になってしまう。あるとき一人が不浄のものを境内で食うと祟りがあるかもと言い出す。嫌なら出ていけ、と他の男が言うと、光を放ちながら飛び去るものがあった。後を追うと、この本尊だった。

ゆうげん地蔵は佐川の児嶋又玄という名医が殿様に呼ばれ、猫の脈を障子越しにとらされてからかわれた。薬はと問われかつをぶしになされと言い残すと、怒りのあまり自宅に火を放って焼身自殺した。以後たたりが相次いで、地蔵で鎮めたらしい。龕に安置されている。

中土佐のしゅむか地蔵は悪ガキが小便をかけながら「しゅむかや、これでもしゅまんかや」と囃し立てていたところ農民に罰があたると諌められた。すると農民は原因不明の病におかされた。太夫によれば地蔵が出てきて、子供にしゅむか地蔵と呼ばれて楽しく遊びよったにいらんことしゆがと大変怒ったという。御利益は子供の病。遠野に似た話がある。この地蔵には他に怨霊がらみの伝説もあるという。

西向き地蔵は大方にあり、はりまや橋の話に似た学僧と村娘の悲恋に絡んだもの。こちらは娘が命をたってしまい、その供養のため作られたもののいつのまにか坊さんの去った西向きになったという。似た話が非常に多く、沖縄は石垣島にさえある。後付けだろう。

物言う地蔵はやや不気味。中村近く峠にあり、江戸時代追いはぎにあった男が殺され、毎年妻子が供養に訪れていたところ、十年目、役人とともに峠で出会った男が、この地蔵は喋るのだ、十年前追いはぎしたとき、誰にも言うなと話かけたら、お前が言うなよ、と返しよった、と言う。役人立ち会いではからずも自ら白状したのだ。

瀬登りの太刀は高知市内の寺にある名刀で箱根権現から来たといい、曽我兄弟仇討ちのさい自ら鞘から抜け川を遡り敵を突き刺した、頼朝の家来から宿の主人が盗もうとしたが蛇となって川を逃げたなどいう。今でも不思議なことがあり、日下から山内家に召し上げられそうになったものの高知城内でいろいろな怪異を引き起こし、刀が場所を選んでいるとして今の龍乗院の本院におさめられた。

鍛冶が婆は野根山街道の有名な化け狼だが石燕本でお馴染みゆえ深くは触れない。同じ街道筋の木下由里は「身二つ」にせず埋葬した妊婦の、いわゆるうぶめ伝説の延長上にある実在の人物。小さな墓石には文政四年とある。番所の娘で山むこうに嫁いだもののろうがいになり里に帰され死んだ。が、赤子に乳を飲ませるため山をこえて通ってくるようになったという。墓石をどうにかしようとすると大雨が降る。赤頭は土佐化物絵本、山父のたぐいか。宇賀鬼女は不気味な噂のたえない深浦あたりに出没したらしい。未確認だが一領具足供養地蔵の敷地に供養墓があるという。
by r_o_k | 2009-08-22 10:52 | 怪物図録 | Comments(0)

岡林リョウ☆フツーのつれづれをフツーに書きたいという変な欲望が囁きました。


by ryookabayashi
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